新規有害化学物質「合成香料」によるヒトおよび生態系の汚染とリスク評価に関する研究

2008年3月に公開された、熊本大学大学院自然科学研究科の實政勲教授らの研究成果報告書より。

「新規有害化学物質「合成香料」によるヒトおよび生態系の汚染とリスク評価に関する研究」

以下、内容を抜粋しました。

近年人工香料による水質や魚類等の汚染が報告され、その生物蓄積性や環境リスクが懸念されるようになった。
本研究は、人工香料による生態系およびヒトへの汚染状況とそのリスク評価を解析した。

始めに有明海の海水と様々な栄養段階の海洋生物を採集・分析したところ、ほぼ全ての試料から環状型香料のHHCBとAHTNが検出された。
過去30年間に目本近海で採集したイルカを分析したところ、HHCB濃度は1980年代半ばから近年にかけて増加しており、香料汚染力観在も進行中であることがわかった。
合成香料は、香水やシャンプー、ハンドクリーム、消臭剤等の日常生活品に多く含まれていることが明らかになり、生活排水が集められる排水処理施設が、環境への放出源である可能性が窺えた。

九州内の病院等から採集されたヒトの脂肪および母乳を分析したところ、いずれの試料からもHHCBが検出され、日本人における人工香料の汚染が初めて確認された。
このことは、授乳により人工香料が母子間移行していることを示しており、化学物質に敏感な乳児への暴露リスクが懸念された。

また、5種類の合成香料を対象に甲状腺ホルモンレセプターを介した細胞のアッセイを試みたところ、一部の物質がホルモン撹乱作用を有することが明らかになった。
海洋生態系の高次物にまで生物濃縮され、さらに汚染の進行が窺える化学物質が見つかる例は最近では少なく、ヒトへの染拡散や乳幼児へのリスク、さらにホルモン撹乱作用の懸念を考慮すると、2003年に改正された化審法の理念を参照して一部の合成香料の製造・使用について何らかの制限を設ける時期に来ている。

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